経営支援集団スリーフォルム

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中小企業のための法務情報

与信管理の重要性

掛取引をする業界では、請求を起こしてから入金までに間が空きます。

通常は、入金予定にあわせて仕入計画などを立てます。

ここで、入金が遅れたり、入金までの間に取引先が倒産すると、途端に自社が窮地に立たされます。

考えてみてください。

利益率が5%のビジネスだとして、250万円の利益が飛んでしまったら、これをカバーする売上はいくらになりますか?

そうです。5000万円です。あらたに5000万円売り上げなければ、250万円の損失を取り戻せないのです。

契約書というのは、入金がなければ単なる紙切れにすぎません。

いくら契約で有利な内容を決めていたとしても、債権を回収できなければ何の意味もないのです。

契約書を作らなくて良いと言っているわけではありません。

契約書は、自社を守るツールです。

自社が相手からクレームが入った場合に対抗できるのは契約書の記載です。

ですから、契約書は絶対に必要です。

それでも、契約書を作って安心ということにはなりません。

取引相手の支払能力の調査・審査は常に必要です。

ビジネスは、売って代金を回収しての繰り返しです。

与信管理を疎かにすることのないよう、あらためて自社の体制を見直してはいかがでしょうか?

執筆:企業法務専門の福本匡洋総合司法書士事務所・福本総合行政書士事務所

合意管轄条項

契約内容の不履行がある場合、裁判になると、法律で定められた管轄の裁判所に訴えを提起することになります。

そして、どの裁判所に訴えを提起するかについて、当事者で合意して決めることもできます。

これを、合意管轄といいます。

よくある例としては、売主の本店所在地を管轄する裁判所とする場合や、賃貸人の住所地を管轄する裁判所とする場合があります。

ところが、裁判所の管轄を一方的に決められてしまうと、例えば、買主が沖縄で売主が東京の場合で、管轄裁判所を東京地方裁判所としてしまった場合、買主は沖縄にいるのに訴えはわざわざ東京地方裁判所に提起するという負担を強いられてしまいます。

そこで、遠隔地の当事者間で訴えを提起する場合は、それぞれ相手方の住所地や本店所在地を管轄する裁判所に訴えを提起すると定めることによって、公平性を保つこともあります。

ここで、合意の管轄について「専属的」なのか「付加的」なのかについて、契約書の書き方で左右されてしまう点に注意が必要です。

明示的に「専属的」であることを記載しないと、「付加的」なものになってしまい、法律で決められた裁判管轄に加えて、合意した裁判管轄の中からどれかを選べるようになってしまいます。

通常、合意管轄を定める場合は、裁判所を絞る趣旨ですので、必ず「専属的合意管轄」であることを記載するように注意しましょう。

執筆:企業法務専門の福本匡洋総合司法書士事務所・福本総合行政書士事務所

知的財産権条項

知的財産権とは、産業財産権に著作権や育成者権、営業秘密などを加えた無体財産権の総称をいいます。

産業財産権は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4つを指します。

上記の知的財産については、例えば、製造委託契約による設計、製造の際に発生する特許権や意匠権、映像制作委託契約での著作権などについて、その帰属を取り決める必要があります。

知的財産権の帰属がはっきりしないままですと、契約終了後に、それぞれの当事者が好き勝手に転用したり第三者に売却したりするリスクが生じてしまいます。

そこで、各契約で発生する知的財産権の帰属について明確にするために、無体財産権が絡む場合は知的財産権条項を設けます。

また、ライセンス契約においては、ライセンサーが真の権利者であることを表明したり、第三者の権利を侵害するものではないことを保証するのが通常です。

知的財産権を保護するための法制度があり、内容が非常に難しいのですが、こちらの取扱いを疎かにすると莫大な損害賠償の請求を受けることもあります。

知的財産に関する取り決めをしっかりと行うことが、自己防衛につながりますので、十分に注意しましょう。

執筆:企業法務専門の福本匡洋総合司法書士事務所・福本総合行政書士事務所

秘密保持条項

業務提携契約やM&A、ライセンス契約、共同研究開発契約などをする場合は、必ず秘密保持条項が設けられます。

場合によっては、秘密保持契約書を別途作成することもあります。

これは、顧客情報、技術情報などの営業秘密を相手に開示することに由来しますが、契約当事者であることをもって当然に秘密保持義務があるわけではありません。。

情報提供の相手が勝手に第三者に営業秘密を漏らしてしまうと、開示した側がクライアントを奪われたり、信用が低下したりするなどの不利益を被ってしまいます。

そこで、こうしたことを防ぐために秘密保持条項が設けられます。

また、秘密保持は取引先同士のみならず、会社と従業員や会社と退職者との間でも契約として取り決められることがほとんどです。

苦労して築き上げたノウハウなどの営業秘密は、絶対に守らなければなりません。

秘密保持条項を上手に活用して、契約当事者双方に利益となる契約書を作成しましょう。

執筆:企業法務専門の福本匡洋総合司法書士事務所・福本総合行政書士事務所

契約の保証条項

商品や製品の品質などについて、契約では保証条項が設けられることがよくあります。

例えば、家電製品の保証やPCソフトの動作保証などです。

逆に、一切保証しないというケースもあります。

例えば、中古品の品質の完全性について保証しない場合です。

こうした品質の保証に関する内容とは別に、第三者の権利侵害をしていないことや、財務内容が真正であることを保証することがあります。

これらの保証については、いわゆる「表明保証」といわれるもので、その内容が真実でないことが明らかになった場合に、何かしらのペナルティが課せられることとなるケースが多く、M&Aによく用いられます。

ペナルティの例としては、契約解除事由にしたり、損害賠償の対象としたりします。

表明保証は、法律上規定されているものではなく、アメリカの契約実務を日本に取り入れたものといわれてます。

あまり馴染みのないものかも知れませんが、今後は品質などの保証だけではなく、契約締結時の事実についての表明保証を加える取扱いも増えてくるでしょう。

保証については、相手に安心してもらう材料という点では同じですので、上手く活用して取引を円滑に進めるように工夫しましょう。

執筆:企業法務専門の福本匡洋総合司法書士事務所・福本総合行政書士事務所

契約の瑕疵担保責任条項

商品の売買契約では、瑕疵担保責任について定めることがほとんどです。

瑕疵担保責任というのは、取引上要求される一般的な注意を払っても見つけられない欠陥があった場合に売主が負う責任のことをいいます。

瑕疵担保責任が認められる場合は、契約の解除や損害賠償が認められ、請求できる期間は、民法では1年(570条、566条3項)、商法では6か月(526条2項)とされています。

もっとも、瑕疵担保責任についての法律規定は任意規定(契約でその内容を変更できる規定)ですので、これを排除したり、逆に加重することができます。

例えば、商取引で新品の商品売買の場合は、瑕疵担保責任の期間を1年に伸ばしたり、逆に中古の商品売買では瑕疵担保責任を負わない、または期間を3か月に縮減したりすることが可能です。

買主が消費者の場合に注意しなければならないのは、消費者契約法10条による無効の対象となるような内容にしないということです。

商品の性質や内容に関わらず、一律に瑕疵担保責任を負わないとするような規定にしてしまうと、消費者の利益を一方的に害する規定と判断され、無効となってしまいます。

瑕疵担保責任は、目的物についての保証の性質がありますので、商品の性質・内容や取引の実態に合わせて、瑕疵担保責任の内容をしっかり検討しましょう。

執筆:企業法務専門の福本匡洋総合司法書士事務所・福本総合行政書士事務所

契約と危険負担条項

商品や製品の売買契約では、「危険負担」について定めることがほとんどです。

ここで、「危険負担」とは何かというと、債権者と債務者双方に責任がないケースで、商品や製品が滅失または損傷してしまった場合、どちらが損失を負担するのかということです。

民法534条1項は、目的物が特定されている双務契約(ここでは売買契約と考えます。)については、その目的物が債務者に責任なくして滅失し、または損傷したときは、債権者がその滅失または損傷を負担するとしています。

どういうことかというと、売買契約が締結されたら、目的物の引渡前に、大規模地震などで売主の責任無くして滅失または損傷してしまっても、買主は代金の全額を支払わなければならないということを意味します。

しかしながら、これでは取引の実態に合わないケースが多々出てきます。

そこで、民法534条が任意規定(契約で特に決めた場合は排除できる規定)ですので、契約で目的物の引渡時に「売主から買主に危険を移転する」旨の特約を付けます。

このようにして、契約書では危険負担条項を定める事によって、取引の実態に合わせているのです。

執筆:企業法務専門の福本匡洋総合司法書士事務所・福本総合行政書士事務所

契約での納品と検収

商品の売買をする契約では、納品方法の取決めと商品の検収についての取決めが行われます。

まず、納品方法については、商品の性質にもよりますが、直接手渡しなのか宅配業者を利用するのかなど、様々な方法が考えられます。

そして、選ばれた方法について、送料などの負担をどちらが負うのか、売主が出向いてセッティングまで行うのかなど、商品の性質を十分に考えて納品方法を決定しましょう。

次に、検収について、商法第526条は「(第1項)買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査し…(第2項)売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が六箇月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。」としています。

「遅滞なく」というのは、正当な又は合理的な理由による遅滞は認めるけれども、すぐにという意味になります。

商法第526条は、買主に義務を認める規定ですので、売主にとっては有利な規定です。

一方で、任意規定(契約で排除することができる規定のことです)ですので、契約で排除することも可能です。この場合は、買主にとって有利です。

とはいえ、契約で排除することは通常の取引ではお互いの立場が確定せず不安要素になります。

そこで、検収については取引の実態に合致するような合理的な期間を決め、検収方法についても合理的で双方が納得できる内容を十分に検討しましょう。

執筆:企業法務専門の福本匡洋総合司法書士事務所・福本総合行政書士事務所

契約終了後の商品等取扱条項

販売代理店契約やコンテンツ作成の請負契約をした場合、商品やコンテンツの原データが手許に残ることがあります。

この場合の取扱いについては、どのようなことが考えられるでしょうか。

まず、商品については、在庫をすべて返品し、同様の業務を今後数年間行わないといったことが考えられます。

これは、契約数量後にも商品を販売され、それが原因でクレーム等につながると、委託者側に実害が発生します。

また、競合商品を無制限に販売することを認めると、委託者側の業績に影響することになるからです。

次に、コンテンツについては、著作権などの知的財産権の帰属を委託者にするといったことが考えられます。

これは、製作者にコンテンツの著作権を留保すると、出版物などの派生商品の販売をしたい場合には、製作者の承諾が必要となります。

そこで、委託者がコンテンツの派生商品を販売したいような場合には、著作権を委託者に帰属させることが必要となるからです。

この他にも、ライセンスが関係する場合の取扱いや秘密保持など、契約内容によって契約修了後の取扱いを慎重に検討する必要がありますので、十分に注意しましょう。

執筆:企業法務専門の福本匡洋総合司法書士事務所・福本総合行政書士事務所

契約の損害賠償規定

民法上、故意または過失によって債務不履行があった場合は、相手に対して損害賠償を請求する権利が認められています。

民法の原則通りの権利とする場合は、敢えて契約書に明記する必要はありません。

一方、①損害賠償を免除する場合、②民法の原則よりも加重する場合、③損害賠償額の予定を定める場合などでは、契約書に明記する必要があります。

まず、①については、例えば、「本契約によって乙に生じる損害の一切を甲は負わない」とするような場合です。

これは、無料のコンテンツの利用など、商品やサービスを無償で提供する場合に設けられることが多い規定です。

次に、②については、例えば、「遅延損害金を年14.5%ととする」と規定するような場合です。

これは、金銭債権について支払いが遅れた場合は、民法上の法定利率が年5%(商法の適用がある場合は、年6%)であるところ、当事者間の合意で10%ととするように、法定利率よりも高い利率で遅延損害金の利率を定めることです。

最後に、③については、当事者間で損害賠償の額を具体的に予定する場合です。

この場合、よく「違約金」として記載されることが多いのですが、民法上「違約金」が損害賠償額の予定と推定されるので、「違約金」の定めがある場合は、実際の損害賠償額より「違約金」の額が多くても少なくても、当事者は原則として「違約金」の額の請求又は支払をもって損害賠償について解決することになります。

なお、労働契約や就業規則で「違約金」を定めると、賠償の予定の禁止(労働基準法16条)に抵触するので、その部分について無効となります。

この他にも、損害賠償規定は、契約内容によって個別具体的に定めることも多くありますので、様々なケースを想定して、お互いの契約内容の実現に向けて検討しましょう。

執筆:企業法務専門の福本匡洋総合司法書士事務所・福本総合行政書士事務所